1988年11月9日水曜日

CHANT D'AUTOMN Ⅳ.海 風

故郷(こきょう)。
弱められた日射しの降る 故郷。

・・・もう長いことぼくは 死んだようにあるいていた

改札。
バスがとまる ゆるやかに広場が傾斜している
懐かしい光景よ
顔のある雑踏よ。振り返れば
いつも
木洩れ陽の降る

並木道。

・・・風が渡る

都会の表紙(カヴァー)につつまれた
《堕落論》が
頁を繰られてゆくセピアの日射しの中で。
絶望と 破壊と合わされない視線 ああ
ぼくが崩れてゆく ぼくに戻る。海風に呑まれて。

・・・はしれ田園を

程よい濃度の
酸素の中を。

ひとときの

故郷(こきょう)。