2004年6月17日木曜日

夕暮レノ海デ、キミト出会ッタ

夕暮レノ海、濡レタ肩、笑イ声...。

そんな風に 遠い
あの日 擦り切れたフィルムは廻りはじめる。
カタカタと音をたて
音をたてて
あの日
きみが何処からか盗んできた映写機は
廻りはじめる。

きみは俯いていた。

長い髪に
隠れるようにして。
何故気づくのか。
何故つまづくのか。見上げれば、
空が
割れて白い破片が舞う。
自転車を押すきみの
冷えきった 右手の甲を
ぼくは見ている。
粉雪。
粉雪。きみの手が握る
冷たいハンドルとそこに降り積もる
雪の結晶を
ぼくは見ていた。いまでも
この胸に抱きよせれば
甘えた目つきで唇を寄せるきみよ。
ぼくたちは
誰もいない都会の
雑踏の中に 閉じこめられたのだ。お互いに

ひとりぼっちで。

夕暮レノ海デ、ボクタチハ出逢ッタ。

蒼ざめた風が吹き渡る
人影まばらなキャンパスを抜けて、ぼくたちは
赤いレンガの
建物を探しにいこう。
深い色のセーターに身をつつみ、細い
石段の道を登って。

道の先には、
何が見えるだろう?
なつかしい 未知の光景を
ぼくたちは見るだろう。
明るい陽光が 昼下がりの中庭に降り注ぎ、
民族衣装を着た娘らや、
彼女らを
軽々と抱きあげる男たちを
ぼくたちは見る。
子どもの頃に聞いた音楽にあわせ
くるくると 踊る、
くるくると...。

ステップを踏んで。

さあ 眠ろう。
深い眠りを。
すべてを思い出し、すべてを忘れるための。
すべてを
もういちど刻印するための
深い眠りを。

そして
目覚めたら

そこはもう すきとおった秋の朝。